やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

責任感をぐしゃっと丸めてゴミ箱へ

 

消しゴムのカスをまとめてシャーペンの先でつついている。やすらぐ。なのに仕事ときたら来年の数字をはじかねばならず、私は来年のことを考えるなんて不幸のどん底だと思った。後悔をつくっているようなものじゃないか。私だけのならともかく、あんたたちの来年なんて知らないよ。あきらめてこれは今のことなんだと思うよう仕向けることにする。この操作が上手く行かずに大勢の来年を背負ってしまうと私は私に潰されてしまう。去れ私の責任感。

ひたいから伸びていた来年の枝がするすると縮んでいって消しゴムのカスくらいになって机の上に落っこちた。重かった私の頭、枝の長さによる慣性モーメントで重かったのだけど、それが少し軽くなる。書類の数字や文章にくっついていた言外の文脈、「この数字は我々の未来なのだぞ」「そこんとこ」「わかってるよな?」をぐしゃっと丸めてポイー。わっかりませーん。

 



身体のレベルまで落とすんだ。何もかも。数字は溶かして飲めるように、文章は水にして泳げるように、利息は音にして聞こえるようにする。落とせ落とせ。来年のことは今に落として、束になった書類は一枚一枚の撫でる紙に落とす。カチカチの文章はやっかいだ。私をそこに泳がせまいと拒んでいる。ならばと時間を逆戻して象形文字、クサビ形、呪文か絵かわからないとこまで落としてやる。文字は「月まで行ってきました」みたいな顔をしている。わたしの文章もそう。わたしの指がキーを叩く。キーを叩くときの指の気持ち良さまで、わたしの身体だけが知っているそのレベルまで引きつけよう。
それがわたしは苦手だから気をつけよう。

 


 


愛されたーい。
もちろんみんなにだよ。つまり会社に愛されたいよ。でも会社が愛してるのは責任感のあるおじさんなんだよ。だからみんな愛されおじさんに変身していくんだ。

 

「会社ちゃんの好きなタイプってどんな?」

「責任感があって残業してくれる人かなー」

「君のためなら俺はそれになる」

 

会社ちゃんとおじさんちゃんは人目を気にしないカップルみたいにイチャイチャしてる。システムとか決まりとか社会や場所も欲望するんだ。それらは発情だってするかもよ。わたしたちはその欲望に応える。私はそんなイチャイチャリア充カップルを横目にうらやましいなあと思いながら消しゴムをつついている。いいな私も愛されたい。愛されてるんだって感じたい。でも今日は会社に抱かれたくない気分さ。