やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

パピプペペッポ

 

起きるのつらい。

昨日も朝が来てつらいめにあった。

これまでの朝のつらさを積み上げていったら地球なんか滅びてしまえと画策する魔王くらいになってるはず。車内でひとりあくびをしながら「ああ眠い」と声にだすとうまく声にならなくて面白い。勤め先まできたらここは勤め先王国で建設仮勘定だとか新規事業開発グループだとか「大変深刻な状況である」とかの異国語が飛び交っていた。


動物園での出来事を再構成する。


「唇がある動物は人間だけなんだよ」

 

「へー。じゃあ破裂音だっけ爆発音だっけ? 出せるの人だけ?」

 

「だから斎藤さんはぺっぺっぺーって言うのかな」

 

Rちゃんは鋭い。ぺっぺっぺーにはなんか、口唇期の子供っぽさがあるもんね。パピプぺばくはつしてしまえ。あの異国語もつらい朝も爆発させる核ミサイル発射ボタンがあったら、積み重なった鬱憤で押せ。泣いている子供は疲れるまで泣き止まないが、大人は誰かを焦がすまで松E一4や北朝鮮みたいに鳴き続ける。唇のことをAくんが話すのだったらわたしの朝のつらさや松E一4や北朝鮮のことも話していいような気がするが、ここは動物園だから遠慮してそれを話すのにふさわしい機会をわたしは伺おう。

「斎藤さんがぺっぺっぺー」と話すRちゃんには敵わないが。

柔らかくて濡れているRちゃんの唇が、唇というか外に捲れあがってしまった口の粘膜がぺっぺっぺーと言ったらもう太刀打ちできないくらいにかわいい。わたしが言ったらバカみたいなだけだ。

 

「鳥はピーピー鳴くじゃん」

 

「あれは咽喉でじゃない? 犬が吠えるのと一緒だよ」

 

AくんとRちゃんはわたしを放っておいて唇を交わすようにしゃべっていた。お似合いのカップルだ。三人いたら必ず話しやすい一人が選ばれて、選ばれなかったわたしは別のことを考える自由を得る。この自由も今までの分積み上げたら大変な魔王になりそうだ。