やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

仮面の女の子たち

 

「あの子、感じ悪くない?」。

 

ええー! さっきまであの子とも楽しそうに話してたのに、いなくなった途端に悪口かい。こりゃあわたしのこともわたしがいないところで言われとるかもしれんで。

仮面の女の子はごく自然に表の顔と裏の顔を付け替えていて、そのさまがとても軽やかだからわたしには分かった。この人には嘘も本当もなくてそれらは何かの下に等価値「嘘=本当」なんだ。彼女は正直に仮面を付け替えていた。花でも摘むみたいに簡単に付け替えていた。

彼女は「私も陰で悪口を言われるかもしれない」なんて訝らない。ずっとずっと言う側であって言われる側ではない。なぜって、彼女は王女だから。王女じゃないけど王女なんだ。それに比べたら「わたしも陰で言われるかもしれない」なんて思うわたしの想像力は、その辺の誰でもいい街娘の貧しい想像力だった。王女が社交界で身に付けた正直な仮面の前で侍女のわたしは「その通りでございます王女さま」と応える以外にない。それは楽しい演劇で演じるのは楽しい。侍女役だって悪くないよ。

幕が下りるまで王女の舞台は続く。もしかしたら臣下や民たちが反乱を起こすかもしれないけど、それは王女の治世と筋書き次第。仮面の彼女が王女の器であればそう続く。そうでなくても劇は続く。観客も演出もシナリオも監督も、みんな兼務したいとわたしは思った。