やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

叡智は届くべき人に、秘密は秘密を守れる大人に届く

「叡智がおまえの所に届いていないだって? そりゃあ叡智を持つものは、それが届くべき所に届き、届いてはいけない所には届かないようにする程度の叡智を持つだろう。叡智とはそういうことができる資格のようなものだ。もう少し待ってみるといい。おまえにその資格があるなら、死ぬまでには届くか届かないかがはっきりするさ」

「盗まれた手紙」と関係する話?

「いや、そう意図したわけじゃない。ペラペラとよく喋る奴らにカチンときたんだ。お灸をすえたと感じたくてさ。嫌な話だよ」

「会話の中には通じるものがあって、通じないものはない。そういう線の引き方、区分けをすれば「盗まれた手紙」は会話の外にあるということ。そんな線だって引けるよ。それは話の中の線なのだから」

イライラしてるね。

「その通り。口の軽い奴に秘密は届かないってはっきりと届いて、奴らの口が重くなればしめたものだよ。秘密は盗まれているって、できれば長い間あの口をつぐませておければ僕もお喋りの仲間入りなんだ」

よくわからないけど、やっぱり「盗まれた手紙」の話じゃないの?

「イライラしたときは早めに別の話をした方がいいから」

そうね。でも、会話の中には通じないもの、届かないことも含まれているんじゃない? 会話の全てが伝わるなんてことないよ。

「そこから始めるのは面倒くさいなあ。秘密は「これは秘密だよ」と打ち明けられたときには秘密ではなくなっているよね。会話の中に伝わらなかったと伝わることは確かにあるよ。言い換えれば、伝わらなかったと気づくことはある。それじゃあ、こういうのはどうだろうか。言語化できないもの、会話化できないもの、伝達化できないものは、言語、会話、伝達の外に出るしかないだろう?」

それはそうだね。会話化できないものは会話の中にありえないね。

「「会話化できないもの」を仮にaとでも名付ければ存在させることができる。会話の中にね。会話にはそういう機能があるんだ」

それってわたしに関係のある話?

「aは会話の外にあるから会話には全く関係がないね。もしも君が会話なら、全く関係はないな」

「わたしが会話なら、関係ない」か。関係があるって言いたいのかな。

「言うならそうだね。同時に「言う」の中にaはない。だからまあ、雲みたいに掴みどころのない話さ」

少しはイライラがおさまってくれればいいけど。

「おかげさまで。ありがたいよ」

よくある、反復することでイライラしていたんだ。
僕が尊敬している人たちを馬鹿にされてね。僕はそれを思慮の浅さに起因したあまりにも不当な否認だと受け取ったんだ。だから、怒った。義憤と呼ばれても差し支えない憤りだけど、義憤なのか自己防衛なのか僕の暴力性なのかは、相変わらず恣意的で。そんな風に線をひきあぐねていると誰かと話をしたくなる。慰めでその線を、義憤なのか暴力性なのかとかを、二重にしてもいいし、雲のような話をしてそれを溶かしてもいい。