やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

文の匂いは指が嗅いでくれる

ヒールのない靴を履いているときの地面感。
大地のお相手は足の裏だなと夏の夜は花火だなくらいの気持ちで思う。一方で手の指のたくさんの相手は彼女たちの浮気性を示している。手の指は鉛筆を握ってみたり唇に触れてみたりと、言うならば淫らだ。スマホの画面をくいくいやってる手の指たちは新しい相手について何を思っているのだろう。前足が地面を相手にしていたときには想像もできなかったろう。木の枝を掴んだときには閃いたかもしれない。でもやはり手の指は一度孤独にならなきゃいけなかった。地面や枝から離れてぶらんと手持無沙汰になって、浮気性を発揮して、指が数を数えはじめる。

手の指がビッチだったので、一途でなかったから、わたしは文字を書けている。よく犬たちがおしりの匂いを嗅ぎあっているが、わたしたちは指の匂いを嗅ぐのだよ文字から。それは一途な匂いじゃない。前足と地面との別れ話、木の枝との別れ話、唇との別れ話、現実との別れ話、そうやってきて、新しいお相手のスマホの画面を指がなぞる。もしも、どうしようもなく指が何かを嫌ったら何にもなってはいない。何かから脱するのは手の指からかもしれないなと思う。新しい手触りや匂いに浮気する指があると大丈夫。