やまもり

山森(故障派)と森山(特になし)の文集

名をつけよう

名をつけよう。そんな機会はそうあるもんじゃないぞ。


「ある作家は名前をつければそのキャラクターが動き出すと言っていたよ」
 
ふうん、そうねえ。でも、名前をつけるってなんか恥ずかしい。親でもないのに名前をつけるなんて。幼いというか、ままごとみたいというか。
 
「じゃあ神さまは中二病かもね」
 
そこまで文字でやりとり。彼に電話をかけた。
 
「いや、だからさあ。すっごい恥ずかしいんだよ」
「もしもし、なにが?」
「だから、あるでしょ。布団の中でもがきたくなる恥ずかしさ」
既に布団の中でバタバタやってるのであった。
 
「恋愛小説を書きたいんでしょ?」
 
「はい」
 
「それなら、名前をつけないと」
「いちばん恥ずかしいやつを書きなよ」
「そうすれば、次に書くときに恥ずかしさが薄れるんじゃない」
「もう電車くるから、またラインで」
 
他人ごとだと思いやがって。おまえの名前で書いてやる。

個人的な意見

個人的な意見なんてものがあるか。

彼はそう語り始めた。

 

「意見を俺に話しているなら、俺とそいつの話じゃないか。個人じゃないだろう」。

 

ひとりごとのつもりなのだろう。そう僕は諌めたが、彼の語りは波だっている。

「個人の意見」なんて言って話し出す奴は信用ならない。だいたい意見ってやつが俺は嫌いだ。そんなのは議員にでも陳情すればいい。俺は政治家じゃない。

 

そうだな。しかし、人が三人集まれば政治が始まると言う。妥協を探そうということさ。

 

僕は自分でそう言って。自分の言葉が感情に火をつけた。

彼の言うとおり、個人の意見なんて言う奴は糞だ。

意見を言えば、調整が必要だろう。

だが、個人の。この個人のというのは醜悪だと思われた。


個人の愚痴、あるいは、個人の誓いと表すべきものだろうな。

ああ、そうだ。愚痴を聞いてくれるのはスナックのママくらいだろう。

三杯目のビールを飲み干して、彼の顔が赤みを帯びてきた。